検査上はなにも異常がないのに、腹痛や下痢または便秘が長期間、繰り返し起こるのが、過敏性腸症候群です。例えば重要な会議の前や電車の中など、精神的ストレスがかかったり、トイレに行きたくなってもすぐは行けないという状況のときに、便意を催しやすくなります。下痢が主症状のケースは男性に多く、女性は便秘を繰り返すケースが多い傾向があります。下痢と便秘を交互に繰り返すケースもあります。
病気の原因はまだはっきりわかっていません。今のところ、腸の感覚が敏感になり過ぎているために、少しの刺激で痛みを感じたり、腸の運動が乱れて下痢や便秘につながると考えられています。一度つらい症状を体験をすると、「いつまたトイレに行きたくなるのか」という不安が新たなストレスとなって、次の症状を起こしやすくしてしまう可能性も指摘されています。
このような解説を読んで、「過敏性腸症候群とはメンタル的に弱い人が罹るまれな病気だ」と思った方もいるかもしれませんね。しかしそうとは言えません。最近の調査では、軽症の人も含めると人口の約1割が該当すると報告され、非常に一般的な病気であることがわかっきています。社会が複雑化し、不況、不安定な雇用、老後の不安など、生活上のストレスは増える一方なので、今後この病気は増えていくことが予想されます。


治療には、整腸薬や食物繊維製剤、止痢薬、下剤などのほか、抗うつ薬や抗不安薬などが病状によって使い分けられます。最近、男性の下痢型過敏性腸症候群に有効な新薬も登場し、より患者さんにマッチした治療法を選べるようになりました。また、とくにストレスの影響が強いと考えられる場合は、内科的な治療に加え精神科での治療がすすめられるようになってきています。
それぞれの患者さんにあった最善の治療法(薬)が決まるまで、少し試行錯誤の時間が必要です。その間は医師の診察に協力してください。どんな患者さんでも、社会生活に支障が生じないレベルに、確実にコントロールできるようになります。また、この病気は年齢ともに症状が軽くなり、自然に治る傾向も見られてきています。
治療の前提として、刺激の強い香辛料などの摂取を避け、アルコールを控え、食事をとる時間帯をあまり変えず、睡眠をよくとるようにしてください。要するに「規則正しい生活」を送るということです。
なお、過敏性腸症候群の患者さんの中には、医療機関に行かず市販薬で対処している人が多くいることが知られています。短期間の服用ならそれでも構いませんが、“下痢止め”と呼ばれる市販薬の中には緑内障や前立腺肥大症に悪影響を与える成分が入っているものもあります。長期にわたり使い続けることは避け、医師の診察を受けてください。
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(ku)














