瞳孔から入った光は眼球の奥の網膜に像を結び、それが映像として認識されます。網膜は眼球の奥一面に広がっているので、たとえ一点を見つめていたとしても、上下左右の広い範囲を同時に認識できます(その範囲のことを「視野」といいます)。網膜はその中央部と周辺部で機能に差があり、中央部は細かい物を見分ける機能が優れています。一方、周辺部の網膜は明るさを感知する機能に優れているものの、細かい物を見分ける能力はあまりありません。
「黄斑」は網膜の中央にあって、細かい物を見分ける能力が最も鋭敏な部分です。私たちは「視力」という言葉をよく使いますが、その視力とはこの黄斑の働きによって決まります。そしてその黄斑の機能が加齢に伴い病的な変化をもたらされた結果、視力に低下を来たす病気が「加齢黄斑変性」です。
この病気では、視野全体が障害されることはありません。しかし、一番見たい所が見えないという大変不便な状態になってしまいます。人口の高齢化とともに患者数が増えてきていて、欧米では中途失明(先天的な原因以外の失明)原因のトップとなっていて、日本でも増加しています。
加齢黄斑変性には、新生血管という異常な血管が発生するケースと発生しないケースの2つのタイプがあります。病気の進行が早く視力に影響が及びやすいのは、新生血管が発生するタイプです。新生血管はとても脆い血管なので、血管の壁から血液成分が漏れて網膜に溜まり、網膜に浮腫(むくみ)を起こしたりしてその機能を障害します。

厚生労働省研究班「わが国における視覚障害の現状」
治療という点では近年、非常に進歩してきています。ほんの10年ほど前までは有効な治療法がなく、発症してしまったら進行を抑えて視力をなんとか保つのがやっとだったのですが、今ではいろいろな治療によって視力の維持はもとより、視力の改善も期待できるようになりつつあります。その新しい治療法の代表が抗VEGF薬という薬です。
VEGFとは血管の成長を促す生理活性物質です。加齢黄斑変性で問題となる新生血管は、このVEGFが増えることで発生します。ですからVEGFの働きを抑えてあげれば新生血管は伸びず、網膜の浮腫もひいて視力が改善してきます。
抗VEGF薬は眼球内への注射により投与されます。病気の勢いを抑えるために、4週または6週に1度、この注射を続けます。注射は外来で受けられ、入院の必要はありません。国内では使用が始まったばかりの薬ですが、今のところあまり副作用は問題になっていません。ただし、正常な血管の新生も抑制する可能性も考えられるため、脳梗塞や心筋梗塞になったことがある方には慎重に使われます。
このほかにも比較的新しい治療法として、光線力学療法があります。これは、光に反応する薬を静脈に注射し、その薬が眼球に達したときに瞳孔からレーザー光を当てて、その薬に化学反応を起こし、異常な新生血管の細胞にダメージを与える方法です。日本人にはこの治療法が有効なケースが多いとも言われています。ただし、副作用で視力が低下するケースがあるため、病気の早期で視力がまだ良好な段階ではこの治療法は行いません。
なお、これは眼の病気全体について言えることですが、たふだんは左右両方の眼で物を見ているため、片方の眼の見え方がおかしくなってもなかなか気付かないものです。病気の早期発見のためには、片方の眼を手で覆って見え方に異常がないかを確認してみて下さい。
病気に関する情報(ノバルティスファーマ)
目の広場(ファイザー)
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(ku)














