男性ホルモンは主に精巣から分泌され、一部は副腎から分泌されます。「ホルモンって、なに?」「女性ホルモンは健康の味方?」で解説しましたが、ホルモンはからだを最適な状態にバランスを保つために分泌される物質です。そのうち、一次・二次性徴や、生殖機能に関わるホルモンを「性ホルモン」といい、男性ホルモンは筋肉や骨を発達させて男性らしいからだつきを作ったり、性的な情動に関係しています。
「女性ホルモンは健康の味方?」で説明したとおり、女性は長い間、女性ホルモンの分泌に大きな影響を受け続けます。初経から閉経までほぼ毎月、月経という目に見えるかたちで女性ホルモンを実感します。そして、閉経近くになると更年期障害と呼ばれるさまざまな症状が現れ、やがて閉経を迎えます。閉経後には、それまで女性ホルモンの働きで抑えられていた骨粗しょう症や動脈硬化などの病気が急に進行する場合もあります。
一方男性は、生涯を通じて男性ホルモンの分泌を意識することは、ほとんどありません。また、女性の閉経に相当する急激な変化もありません。
女性の女性ホルモン分泌量は、閉経後は男性よりも少なくなり、わずか数年で急激な変動が訪れます。このため、女性ホルモンと健康の関係は長く研究されてきました。
それに対し、男性ホルモンと健康の関係については、最近まであまり研究されていませんでした。男性における男性ホルモンの分泌量は、20代から徐々に低下するものの、70代、80代になってもかなり維持されているためです。
そのため「女性ホルモンはからだに良さそうだ」というイメージが作られる一方で、男性ホルモンの分泌量が健康に及ぼす影響はまだよくわかっていません。一般的なイメージとしては、「頭髪が薄くなるのは男性ホルモンのせい」などと少し悪者扱いされる風潮もあるようです。
確かに男性の脱毛症治療には、男性ホルモンの働きを一部抑える薬が使われ始めています。前立腺がんの治療にも、男性ホルモンの分泌を抑えたり、女性ホルモンを薬として使うことがあります。ですが、「男性ホルモンは健康の敵」かといえば、もちろんそんなことはありません。
近年、「男性更年期障害」という言葉をよく見聞きします。50代ぐらいの男性が、特別な理由もなく身体に不調をきしたり気分が落ち込んだりするもので、女性の更年期障害によく似ています。
そして、この男性更年期障害の背景に男性ホルモンの分泌低下がしばしば認められることがわかってきました。男性更年期障害の方に男性ホルモンを補充すると、さまさまな症状の改善効果が期待できます。このようなケースでは、男性ホルモンが「健康の味方」となるわけです。
また、男性ホルモンの分泌低下と骨粗しょう症や認知症の関係を示した報告もあります。体脂肪減少効果やインスリン感受性の改善効果もあるとされていて、近年ではメタボリックシンドロームとの関係も研究されています。
もちろん療法で男性ホルモンを用いる場合には、注意点もあります。例えば、多血症や肝機能障害などの副作用も知られていますし、前立腺がんの危険を見越してPSA検査を定期的に行う必要もあります。もっとも、女性に対する女性ホルモン補充療法にも、乳がんの発病などの注意点があることは同じです。















