「いつかはがんになるのだろうか」と漠然とした不安をかかえている方は少なくないと思います。日本人の死亡原因のトップは‘がん’で、3人に1人はがんで亡くなります。2人に1人は一生のうち一度は何かしらのがんにかかると考えられます。多くの方が抱く不安は、残念ながら今のところ的中する確率が高いと言えます。
がんにも男性に多いがんと、女性に多いがんがあります。そして、同じ臓器のがんでも、男性と女性で発生しやすい場所や発病しやすい年齢が異なるがんがあります。また、新しい抗がん剤の中には、その効果に性差があることもわかってきました。
ひとくちに「がんの性差」と言っても、その内容はこのように多岐にわたります。今回はまず、がんの部位別に患者数の性差を厚生労働省『患者調査』の受療率でみてみましょう。

全体的に男性のほうが女性よりも受療率が高い(患者数が多い)ことがわかります。とくに喉や食道、胃などの上部消化管、気管支や肺などの呼吸器、そして膀胱のがんなどは、受療率自体が多く、かつ性差が大きいことが示されています。
喉や食道、胃、呼吸のがんは喫煙習慣が発病に関係していますので、喫煙率の差の影響がそのまま受療率の差として表れていると考えられます。また、喉や食道のがんはアルコール摂取習慣も関係しており、その影響もあると言えます。
肝臓がんも男性に多く、これにもアルコール摂取の差が影響していると考えられます。もっとも、女性の場合は月経(生理)により肝臓に負担をかける鉄分が常時男性よりも少ないことや、女性ホルモンの炎症抑制作用などががんを抑えるうえで有利に働くこともわかっています。
一方、女性に多いがんとして、甲状腺のがんが挙げられます。がんに限らず、甲状腺炎・甲状腺ホルモン分泌異常(バセドウ病や橋本病)など、甲状腺の病気は女性に多いという特徴があります。なお、甲状腺がんの多くは進行が遅く治療しやすいタイプですが、なかには進行が早いタイプもあり、そのタイプでは患者数の性差が少ない(男性の患者さんも比較的多い)傾向があります。

次に、がんによる死亡率の男女差を厚生労働省の『人口動態統計』から抜粋すると、表2のようになります。
当然ですが受療率で性差が見られるがんは死亡率にも性差があるわけですが、両者をよく比較すると、性による差があまり変わらないがんと、差が拡大または縮小しているがんのあることが見てとれます。
食道や胃、膵臓、結腸(大腸)などのがんは、受療率の性差と死亡率の性差があまり変わりません。その一方で、肝臓がんや膀胱がんは、受療率ほどの性差が死亡率ではみられなくなり、胆のうがんではむしろ女性の死亡率のほうが若干高くなっています。反対に、呼吸器のがんは、受療率の差以上に死亡率の差が開いています。
このような変化は、がんの種類によっては治療効果にも性差があることを示しているという見方ができます。とくに、近年開発が相次いでいる「分子標的薬」と呼ばれる抗がん薬は、効果がある患者さんとそうでない患者さんの差がはっきりしており、例えば肺がんに用いられる分子標的薬であるゲフィチニブ(商品名はイレッサ)は、男性よりも女性のほうが効果の発揮されるケースが多いことがわかっています。















